赤生津・安部氏の出自を尋ねて

外史による新たな前九年合戦(1051年)伝説発掘と、白鳥舘の安倍頼時七男「比与鳥七郎」その妻「列女」を顕彰する

安部外記助・安部小次郎宛の葛西晴信文書の検証

(葛西左京太夫晴信文書 葛西史史料第4巻)

「安部外記介あて、軍功により赤生津村に5千苅永代」は、偽書となりうる可能性がある。ただし、外記介の孫、赤生津の「安部小次郎」は、伊達世臣家譜(伊達の門外不出の書)により「平士」であることは証明されている。

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「安部小次郎宛軍功により黄海に五千刈」も偽書となりうる可能性がある。

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真偽判別は、「黒印」「文言上の特徴」「紙」「用紙法」がある。

 

石巻の歴史第6巻 167頁)

「文言上の特徴」

①「此度」「今度」→葛西関係の偽書はほとんどこの「コノタビ」で始まっている。従って、「コノタビ云々」ときた場合、まず偽書として注意しなければならない。ただ戦国期に「今度」という用法は真正な文書にも管見できるので、百パーセント偽書と考えることはできない。

②「一戦に及び」→これも偽書によく見られる用法である。「一戦を遂げ」となっているものもある。家臣の反乱は「某逆意」「某逆心」という書きぶりで登場する。これらの用法は真正文書には見られない。

③「其方武勇を以って」→「其方武略を以って」となるものもある。偽書によく見られる用法である。

④「某を討取」→真正文書にこのような用法は管見できない。

⑤「敗軍」→これは江戸期の用法であろう。

⑥「比類なき手柄に候」→真正な最上関係文書にも「比類なき働に候」と見え、これをもって偽書と即決はできない。ただこの用法は偽書にかなり登場する。

⑦「加増として」「忠賞として」→これらの用法は偽書にかなり見られる。

⑧本文の結びは、種々なものが見られるが、末尾で真偽の判断をすることは至難である。

左京大夫花押系の偽書は、書状であっても年紀を有するものがかなりある。

⑩その他「出入」「其方馳来」「速勝利を得」「為軍功賞」「前代未聞」などの用法が偽書によく見られる。